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〈リオオリンピックを振り返って〉 濃密な刹那 三宅宏実の「不思議な3本目」

リオオリンピックもいよいよ閉会まであと少し。みなさんはどんなシーンが印象に残っていますか?

 

これから、リオオリンピックを振り返って印象に残ったシーンや感じたことをいくつか書いていこうと思います。

 

今回紹介するのは、前半戦で一番印象に残っているシーン。ウェイトリフティング48kg級で銅メダルを獲得した、三宅宏実選手のスナッチ3回目の試技です。

 

「不思議な3本目」

 

彼女が自らそう評した試技は、神秘的な気高ささえ感じました。

 

スナッチとクリーン&ジャークという2つの種目で上げた重量の合計で争うウェイトリフティング。それぞれの種目の試技は3回ずつ。スナッチは、しゃがんだ姿勢のまま一気にバーベルを頭上に上げ、そこから立ち上がります。

 

五輪直前に持病の腰痛が悪化。人生で初めての痛み止めを打って臨むも、2回の試技で81kgが上がりません。体が浮き上がらないどころか、しゃがんだ態勢を維持することもままならない。2回目の試技失敗の際には、地面に落ちたバーベルを握った屈伸の姿勢のまま頭をガクッと下げました。

 

そして3回目。重量は再び81kg。これを失敗すると記録無し。

 

一気に持ち上げたバーベルの重量に対し、ぐにゃりと膝が内側に歪む。腰はグンと沈み一瞬尻もちをついたようにも見えました。

 

「あぁ、ダメか!? 」

 

そう感じた瞬間。驚くことに、悲鳴をあげたように見えた彼女の身体が、態勢を立て直している!! 懸命に持ちこたえると、 バーベルを掲げた身体はそのまま力強く立ち上がっていきました。試技に入ってから成功のブザーが鳴るまで、わずか5、6秒。そこには、傍目から見て限界と思える状況から乗り越えていく彼女の強さが凝縮されていました。なんと濃密な刹那。

 

きっとその裏には、喜びも悔しさも味わってきた芳醇な経験があり、故障と紙一重の鍛錬があり、師であり父でもある三宅義行さんをはじめとする周りの支えがあるのでしょう。だとしても、様々なプロセスを裏に携えて4年に1度の瞬間に賭けているのは、オリンピックに出場している誰もが同じ。そして、必ずしも結果として報われないことだって多い。だからこそ彼女は、私が力強さに震えたその試技を、「不思議な3本目」と言ったのかもしれません。

 

近代オリンピックのモットーは「より速く、より高く、より強く」

三宅選手のおかげで、私は早くも開会式翌日にその1つと出会うことができました。

 

これから数日間、オリンピックの総集編があちこちで放送されます。

彼女の濃密な刹那。リアルタイムの興奮にはかないませんが必見です。