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カーリング女子世界選手権から 大きな飛躍感じさせる小穴桃里選手の2投

 

こんにちは。katsuspoです。

 

カナダのノースベイで開催されているカーリング女子世界選手権。日本代表は、4試合を終えて31敗と中々いいスタートを切っています。

 

ネットやテレビで、平昌五輪代表がペアを組んだミックスダブルスの日本選手権ばかり取り上げるのには少々がっかりでした。それでも、日曜日でミックスダブルスの日本選手権も終わって、世界選手権のニュースが増えるかと思いきや、潮が引いたようにカーリングのニュースは減る有り様。メディアの結論は、カーリングに需要があるわけではなく、LS北見に需要があるということなんでしょうか。さびしい限りです。

 

さて気を取り直して、話を進めましょう。まずは、今回のカーリング世界選手権の概略から。

 

今回のカーリング世界選手権に出場しているのは13ヵ国。これまでの12か国から参加国が1つ増えました。決勝トーナメントへの出場条件も変わっています。今までは、予選リーグの上位4チームが自動的に決勝トーナメント進出でしたが、今回は予選6位のチームまでチャンスがあります。予選1,2位のチームは自動的に決勝トーナメント進出。残りの2枠は、予選3vs予選6位、予選4vs予選5位の決定戦を行い、その勝者に与えられます。

 

次に出場しているチームです。平昌五輪とは別のチームで参加している国が結構ありますが、平昌五輪金メダルのスウェーデンと銀メダルの韓国からは同じチームが出場しています。そして、注目なのはカナダとスイスのチーム。五輪でまさかの予選敗退を喫したカーリング大国カナダ。地元開催の今大会に出場するのは、2014ソチ五輪金メダリストのジェニファー・ジョーンズのチームです。かつて世界最高のスキップと謳われたジェニファー・ジョーンズは、多くのカーラーたちが憧れるカーリング界のスターです。そして、平昌五輪ミックスダブルスで金メダルを獲得したケイトリン・ローズもこのチームのメンバーです。同じく五輪で予選敗退したスイス。スイスは、20142016年の3連覇を含め、直近6年で4回世界選手権を制している超強豪国です。今回は、20142016年の世界選手権で優勝したビニア・フェルチャーのチームが出場します。2016年の世界選手権では日本代表のLS北見と決勝を戦ったのも記憶に新しいところ。五輪に負けないような豪華な顔ぶれが揃いました。

 

そんな強豪たちと戦う女子日本代表は、富士急のメンバー。今回は、西室淳子選手が出産を控えて妊娠中の為、代わりに北海道銀行に所属している小野寺佳歩選手がメンバーに入っています。

 

ここで、なぜ平昌五輪代表のLS北見が出場しないの? と思う人もいるでしょう。

 

日本が世界選手権の出場権を獲得している場合、世界選手権の日本代表は日本選手権の優勝チームなのですが、平昌五輪代表の男子SC軽井沢クラブと女子LS北見は日本選手権に出場していませんでした。日本カーリング協会が五輪代表チームは五輪本大会に専念してもらうという名目で、日本選手権に出場させないことを決定していたからです。この協会の決定に関しては、これまでの五輪イヤーの日本選手権が時期を遅らせて五輪後に開催していたこともあって物議を醸しました。

 

決定の良し悪しは別として、SC軽井沢クラブとLS北見以外のチームに日本代表として世界と戦うチャンスが与えられました。そのチャンスを生かしたのが、128日~24日に行われた日本選手権で初優勝した富士急というわけです。富士急は初の世界選手権出場です。ちなみに男子代表はteam IWAIが世界選手権に出場します。こちらも初出場になります。

 

ドイツとの初戦、日本は9エンドを終えて451点リードを許して、後攻で第10エンドを迎えます。カーリングのセオリーは、不利な先攻で相手を1点に抑え、有利な後攻で2点を取ること。第10エンドで2点取れれば勝利ですが、1点しか取れなければエキストラエンド(延長戦)を不利な先攻で迎えることになります。

 

このしびれる場面で、チームを勝利に導くショットを2投続けて決めたのが、スキップの小穴桃里選手でした。

 

ここでスキップについて、少し解説したいと思います。

 

スキップという言葉に関しては、今回の五輪で聞きなれた方も結構多いのではないでしょうか。五輪日本代表だと、男子の両角友佑選手や女子の藤澤五月選手がスキップですね。

 

スキップは、相手チームの狙いを読みながら自チームに有利となるショット選択を考え、デリバリーされたストーンが狙い通りの場所に置けるように、ハウス後方からスイーパーに指示を与えるのが役割。まさにチームの戦術をつかさどる司令塔です。通常のツアー大会では、日本選手権や世界選手権とは違ってスキップの名前がチーム名になります。今回の富士急であれば、チーム小穴となるわけです。

 

そして、スキップ=最後に投げる選手と結構思われがちなんですが、必ずしもそうではありません。

 

ポジション名は、最初に投げる人から順に、リード→セカンド→サード→フォースといいます。そして、スキップが担当するポジションを、スキップと言い換えるのが普通です。例えば、セカンドの選手がスキップのチームの場合は、リード→スキップ→サード→フォースと呼ぶことになります。スキップがフォースを担当するケースが多いので、フォースという呼び名を耳にすることが少ないのです。以前のスウェーデン女子代表には、リードの選手がスキップを務めるチームがありました。

 

富士急の小穴選手は以前からスキップでしたが務めていましたが、ポジションはフォースではありませんでした。2年前の日本選手権ではセカンド、昨年はサードを担当しています。チームの作戦を立てる司令塔は小穴選手でも、チームの勝敗を決定するショットを担当するフォースは西室選手でした。西室選手は北海道銀行小笠原歩選手と同世代で、かつてはチーム長野のメンバーとして、チーム青森と五輪代表権を争った選手です。若い富士急のメンバーの中で、数多くの修羅場を経験した唯一のベテラン。そういう意味では、富士急の大黒柱は西室選手でもありました。

 

そして、今シーズン。小穴選手は、出産を控えて妊娠中の西室選手に代わりフォースを担当することになりました。スキップとしてチームの作戦を立て、フォースとして最後のショットを担当する。チームの大黒柱として、その真価が問われるシーズンなのです。

 

ドイツ戦の第10エンド、小穴選手の1投目。彼女がデリバリーしたショットは、前にあった石の後ろに完全に隠れつつ、なおかつハウスの中央に1番近い石となる絶妙のカムアラウンド!! このファインショットで一気に形勢は日本有利に傾きます。ドイツは、直後のラストショットでこの石に触れることができません。日本の石がナンバー1のまま迎えた小穴選手の2投目。2点目を狙ったドローショットはハウス中央に止まり日本の勝利が決まりました。

 

思えば、初優勝を果たした日本選手権決勝。窮地を脱するナイスショットで北海道銀行に食らいつき、チームを見事逆転に導いたのも小穴選手でした。そして、初の世界選手権という大舞台、しかも初戦の勝敗を左右する中でみせた見事なラスト2投は、彼女の大きな飛躍を感じさせるものでした。

 

日本代表として世界と戦う経験は、彼女だけでなくチームにとっても何物にも代えがたい財産になるはず。今後の彼女たちの戦いぶりが楽しみです。