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メダルをたぐり寄せた好ダブルス 〜卓球男子団体準決勝ドイツ戦〜

卓球男子団体準決勝、日本は3−1でドイツを降し、銀メダル以上を確定させた。

 

ロンドン五輪で女子団体が銀メダルを獲得してから4年。4年の時を経て、男子卓球は女子に追いついた。

 

日本0−1ドイツで迎えた第2試合で登場したエースの水谷隼は、シングルス銅メダルの好調をそのままにティモ・ボルを撃破。日本2−1ドイツとなり王手をかけた第4試合ではバスティアン・シュテガー選手を圧倒した。これぞまさにエースの戦いぶり。

 

そして、何といっても丹羽孝希と吉村真晴のダブルス。決勝への扉をこじ開けたのは、この素晴らしいダブルスを作れたことだ。

 

今大会の団体戦の特徴は、ダブルスがあること。

 

4シングルス1ダブルスの団体戦では、1人がシングルス2本、あとの2人はシングルスとダブルス1本ずつの出場。ちなみに隔年で開催される世界卓球団体は、5シングルスのためダブルスがない。

 

メダル候補の強豪国は、シングルス2本を両方落とすことがないようなエースと、実力ある準エースを備えている。4シングルスのうち3本を取るのが至難を極めるような強豪国同士の戦いにおいては、ダブルスの結果が大きく勝敗を左右する。

 

卓球のダブルスは必ず交互に打たなければならない。自分のサーブやレシーブ後の相手の返球を処理するのはパートナー。パートナーの長所を理解し、自分達の形を作り上げ、ストレスなくローテーションができるコンビネーションがダブルスの力となる。

 

ダブルスは1+1が3にも4にもなることもあれば、2にもならないこともある。強い選手同士が組むことが、そのままダブルスの実力にはつながらない。私も学生時代に卓球をやっていたが、個人ではそこそこなのに組むと抜群に強いダブルスをがよくいた。例えば、昨年の世界卓球。中国のナンバー1ダブルスをあと一歩まで追いつめたのは、個人の世界ランクでは決して高くはない森薗・大島組だった。

 

団体初戦のポーランド戦では敗れたものの、ドイツ戦での丹羽/吉村のダブルスは完璧だった。吉村のサービスから丹羽が強打。丹羽の好レシーブから吉村が強打。そして、吉村が中・後陣からドライブで盛り返したラリーを、丹羽が仕留めるコンビネーションは見事だった。

 

奇しくも、同じ準決勝で同じドイツと対戦し、フルゲームの熱戦の末に敗れてしまった女子。第1試合の最終ゲーム9−3から逆転で落としてしまった伊藤美誠。第5試合の最終ゲーム9−7から逆転で落としてしまった福原愛。2人は試合後、敗戦は自分の責任だと語った。とはいえ、伊藤が対戦したペトリサ・ソルヤは、今年の世界卓球団体で石川と福原を破っている実力者で、力はほぼ互角。福原が対戦したハン・インは、カットマンの中では最上位の世界ランク7位にしてドイツのエース。最も痛かったのは、ダブルスを落としたことだった。五輪直前の国内合宿でダブルス練習を積んで臨んだが、試合を見る限りでは成熟度を高めきれていなかった。

 

日本女子の強みは、3人全員がエースになり得るような遜色のない実力を備えていること。五輪代表選手が決まった当時、女子の村上監督は3人全てがダブルスを組めるようしていきたいと言っていた。あえてダブルスを固定しなかった。しかし結局のところ、福原と伊藤の組み合わせしか選択肢を残せず、しかも準備が遅れてしまった。その不安要素は、大会時の調子や相手との相性によって多様なオーダーが組めるという目論見が外れた以上に大きかった。

 

今年1月の全日本選手権。石川は平野早矢香と組んで出場した。伊藤は平野美宇と組んで出場した。福原はダブルスにはエントリーしなかった。そして、丹羽と吉村はダブルスを組んで出場していた。その五輪への準備は、この大一番で実を結んだ。

 

男子決勝の相手は中国。絶好調のエース水谷は、シングルス準決勝で今まで全く歯が立たなかった中国のエース馬龍から2セットを奪うなど、ここ最近では最も中国勢に近づいている充実ぶり。準決勝の丹羽/吉村のダブルスは、対中国戦にも期待がもてる好内容だったし、シングルスでも一発がある選手。中国の壁は想像以上に険しく高いのだが、思った以上に面白い戦いが見られるのではないかとワクワクしている。