情熱のカムアラウンド

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プレーオフ、そして激闘の準決勝へ 〜日本カーリング選手権7日目①〜

生で試合を観ないとわからない空気があって、TV中継には映らないシーンがある。

 

そして、TV中継で見ることのできない名勝負に立ち会えることを、改めて思い知らされた。5日目のチーム軽井沢の中嶋星奈のラストショットもそう。そして、今大会で一番記憶に残った準決勝の激闘で。

 

大会7日目。

大会も残り2日。会場に入ると、ロビー正面にブースができていた。今日明日は、入場者に、「青天の霹靂」というブランド米のおむすびと豚汁、さらにリンゴが振る舞われるとのこと。いただいた豚汁で身体を温めて、予約していた観戦チケットを購入し、予選リーグとは反対側の2階観客席へ向かう(今日と明日は観戦が有料で、事前にチケット予約が必要)。

 

大会は、男女の予選リーグが終了。今日の午前中は、4面ある試合シートを全て使用して、男女上位4チームによるプレーオフが同時タート。2階観客席は、それぞれのチームコーチ席と、タイムオフィシャルの席が最前列に設けられている。その後ろには大会関係者席が並び、一般観客席は一番上段の20席。4面全てをのぞき見るのが難しい程に大勢の人で埋まり、汗ばむ程の熱さだ。

 

プレーオフ

第1シート(女子) 富士急(予選4位) 9−7 チーム軽井沢(予選3位)

第2シート(男子) SC軽井沢クラブ(予選1位) 7−4 チーム東京(予選2位)

第3シート(女子) LS北見(予選2位) 6−3 北海道銀行(予選1位)

第4シート(男子) チーム萩原(予選3位) 8−6 札幌(予選4位)

 

LS北見SC軽井沢クラブは明日の決勝へ。

決勝進出をかけた午後の準決勝は、北海道銀行vs富士急、チーム東京vsチーム萩原となった。

 

目を奪われたのは、北海道銀行LS北見の一戦。第7エンド以降、北海道銀行のショット精度に狂いが出たが、それまではひときわレベルが高い試合だった。

 

特に印象に残ったのは、第5エンド。まず、北海道銀行サード吉村選手が、2つのガードストーンの間を通し、ダブルテイクアウトを決め、なおかつ自分の石をハウス中央に残すファインショット決める。それに対して、LS北見サード吉田知那美選手がフリーズを決めたシーン。

 

フリーズというショットは、相手の石の前にぴったりとくっつけるショット。これがしっかり決まると、その石を打ち出そうとしても、後ろの石が支えになってしまい打ち出せない。カーリングの中でも、ウェイトと曲がり幅の両方がきっちり合わないと決まらない高難度ショットの1つ。主導権を握ろうとした好ショットに、主導権を渡さない“凌ぐ”ショットの応酬。見応えのある高レベルの攻防。

 

北海道銀行が決して内容が悪いわけでもなかったが、LS北見の隙を見せない厳しいショットが見事で、北海道銀行のスキップ小笠原選手にチャンスを与えなかった。

 

 

 

午後15時からの準決勝。先に終了したのは男子。チーム東京は、チーム萩原に10−7で勝利し、今大会3度目のSC軽井沢クラブ挑戦となった。

 

そして、女子準決勝の北海道銀行対富士急。午前のプレーオフに比べ観客は減っていた。しかし、残っていた人は、心から帰らなくて良かったと思っただろう。それは、カーリングの面白さを詰め込んだ、今大会最大のサプライズにして屈指のベストゲーム。

 

試合開始。

第1エンドは後攻北海道銀行が、第2エンドは後攻富士急がそれぞれ1点を確保。

 

素晴らしかったのは、富士急のセットアップ(セカンドまでの4投によるストーンの配置)。対して、北海道銀行は、リード近江谷選手の1投がホッグラインを越えず無効になったり、セカンド小野寺選手のドローショットがハウスをオーバーしたりと後手に回った。

 

昨日までの予選とプレーオフを見ていて、感じていた勝負を分けるスキルの1つに、“セットアップの安定感”がある。

 

もちろん、北海道銀行LS北見にもミスはあるが、その回数はぐっと少なかった。当然、相手にスチール(先攻チームが得点を取ること)やビッグエンドを許すことも少ないし、後攻時に2点を取るチャンスも多い。他チームの試合では、特にウェイトのコントロールミス(ショットが短すぎる、又は長過ぎる)が多く見られた。

 

この試合、北海道銀行が複数点を取ったエンドは、第3エンドの2点1回のみ。この時は、富士急がセットアップで2投続けてミスを出してしまった。しかし、それ以外のエンドでは、富士急のリード小谷選手、スキップ小穴選手(セカンドだが主将)は、辛抱してセットアップを続け、北海道銀行に食らいついていた。

 

第3エンドで北海道銀行が2点を取り、3−1とリード。富士急は第4エンドで1点を返す。第5エンドは、後攻北海道銀行がブランクエンド(両者ともに0−0のエンドの事。その場合、先攻後攻はチェンジしない)。北海道銀行3−2富士急でハーフタイム。

 

再開後の第6エンド、後攻の北海道銀行が1点を取り、4−2とする。第7エンド、後攻の富士急が1点を取り返し、1点ビハインドで終盤エンドへ。

 

この試合後、「私のところでミスをしたのが大きかった」と、北海道銀行のスキップ小笠原選手はコメントしている。しかし、個人的には、さすが小笠原選手と思わせられる場面が多々あった。富士急にミスが出た第3エンドではしっかりと2点を取る。チャンスは逃さない。そして、それ以外の後攻エンドでも1点は確実に取る。特に第6エンド。ハウス内のナンバー1、2、3ストーンは富士急だったが、しっかりナンバー1ストーンを作って1点を確保。このラストショットにはうならされた。

 

これこそ、セットアップの安定感と共に感じていた、勝負を分けるスキルのもう1つ。“取らされる1点をしっかり取る”ということ。

 

前の記事でも述べたが、

「いかに、先攻の時は相手を1点に抑え、後攻の時に2点取るか」

カーリングのセオリー。しかし、先攻チームにうまく展開されると、仕方なく1点を取らざるを得ない場面が出てくる。しばしば、『先攻が1点を取らされる形』なんて言葉で形容されるのはこのためだ。

 

とはいえ、ハウス内のナンバー1ストーンが相手の石だとしたら? この取らされる1点をミスしてしまったら、逆に相手にスチールを許してしまう。北海道銀行LS北見は、この1点を高い確率できっちりと取りきる。だから、相手にスチールを許すことが少なかった。逆に、他チームは、この取らされる1点を取り逃がすことが多かった。

 

ただ、この試合では、富士急のフォース西室選手も小笠原選手に負けていない。後攻で迎えた第2、4、7エンド。彼女のラストショット時、2点チャンスはなく、ミスショットすればスチールを許す場面。果たして、彼女は取らされる1点を全て確保し、接戦に持ち込んでいった。

 

ここまで、両チームともスチールが1度もなし。複数点は、第3エンドの2点のみ。張りつめた我慢比べが続く中、北海道銀行という強いチームに引きずられて、富士急の集中力が研ぎすまされていくのを感じていた。

 

 

 

※今回は長くなりましたので、2回に分けました。続きは、次の記事でお楽しみ下さい。