情熱のカムアラウンド

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勝敗ではなく、試合内容に興奮したい

今月14日、卓球の平野美宇選手が、中国のトップ選手が集まる中国スーパーリーグへ参戦するため日本を発った。彼女は先日、卓球のW杯で日本人初、しかもW杯史上最年少となる16歳での優勝。中国勢が不参加だったこともあるけれど、準決勝、決勝は共に世界ランク一桁の選手を堂々破っての快挙。先月は、愛ちゃんこと福原愛選手の結婚だったりと、日本卓球界は明るいニュースが続いている。

 

そして、何よりも女子に限らず男子にも注目が集まりはじめたのが、卓球ファンにとっては嬉しい。

 

「卓球残念やったけど、水谷って人凄いね」

 

8月18日の朝、僕の友人からこんなLINEメールが届いた。もちろん、「水谷って人」というのは、個人戦で銅メダル、団体で銀メダルを獲得する活躍を見せ、最近はメディアへの露出も多い水谷隼選手のこと。この日に行われた中国との団体戦決勝、水谷選手は世界ランク3位の許キン選手(キンは日へんに斤)をフルセットの末破った。

 

卓球ファンならいざ知らず、卓球にさほど関心のない友人から届いたメールだったからなおさら嬉しかった。

 

卓球にさほど関心のない人が衝撃を受けるくらい、卓球の面白さが伝わったんだと。

 

この日の許キン戦に限らず、団体準決勝のティモ・ボル(ドイツ)戦も面白い試合だった。そして敗れはしたものの、個人戦準決勝で0-3から2セットを返した世界ランク1位の馬龍(中国)戦も素晴らしかった。その成績以上に、多くの人に卓球の面白さを伝えたことこそ、彼の一番の功績だと僕は思う。

 

僕自身、卓球に関してはメダル云々よりとにかく中国選手との試合を見たいという気持ちが強かった。テニスの4大大会で錦織圭選手の勝ち上がりを期待してしまうのも、悲願の優勝を見たいというよりは、ノバク・ジョコビッチとの試合を見たいという気持ちの方が僕は強いのかもしれない。

 

単なる勝敗ではなく試合内容に興奮したい。また次も見たいと思わせてくれるような面白い試合が見たい、と。

 

さて、サッカー日本代表はどうだろう?

多くの人に、何としても次の試合も見逃したくないと思わせることができただろうか?

 

今月の2連戦。アディショナルタイムに山口蛍が決めたイラク戦の劇的な勝利。アウェーで貴重な勝ち点1を手にしたオーストラリア戦。確かに、勝敗に対する興奮度はあった。

 

しかし、その試合内容には興奮できなかった。

 

荒っぽく言えば、攻撃は原口に何とかしてくれとすがるだけのチームだった。相手に前からプレッシャーをかけられると、まともにパスがつながらない。多くの時間を、蹴り込んだボールを競い合うことに割いた。ペースダウンとペースアップを使い分けたり、機をうかがって急所にパスを入れるような場面も少ない。ただただ個人の頑張りと踏ん張りを期待する単調なチームに、アジアレベルでは多少なりとも感じさせていたエレガントさは消えていた。僕がピッチ上で印象に残ったのは、鬼気迫る原口のプレーぐらい。イラク戦で交代出場する山口の背中をポンと叩き、同点の終盤に誰よりもベンチの前に出て戦況を見守る長友の姿の方が、ピッチ上よりもよほど印象に残った。オーストラリア戦のリアクション的な戦い方も、1つの引き出しとして身につける為であったなら前向きにとれる。1対1の強さを求め、縦に早い攻撃を求めるのも、世界基準から考えて日本が足りないと思われる部分を限りなく近づけていく為に必要だからと考えれば、日本にはできないと決めつけるよりも意欲的な取り組みだとも言える。だけども、それは先を見据えた1つの引き出しというよりも、単なる目先の勝ち点1を拾いにいったようにしか映らなかった。

 

「W杯の後、少し成績は下がったが、選手達は復活するのに十分なクオリティを持っている。成し遂げるだけの力を持っている」

 

昨年3月の就任会見でそう話した指揮官が、オーストラリア戦前の記者会見で発した言葉は随分と毛並みの違うものになっていた。

 

「もし、1年前にこの状況がわかっていれば」

 

W杯に出場することが最終目的地だと下方修正するならば、ホームのイラク戦で勝ち点3、アウェーのオーストラリア戦で勝ち点1を獲得した結果は、悪くないと思う。しかし、W杯に出場することを通過点とするならば、イラク戦の辛勝は物足りなかった。アウェーのオーストラリア戦は、勝たなければいけない試合ではなくても、最後まで勝ちにいかなければならない試合ではなかったか?

 

少なくとも僕は、W杯に出場できたことだけが収穫になるぐらいだったら、内容にこだわって最終予選で敗退する方がまだいいと思っている。その時は、日本を押し退けてW杯に出場したアジアの代表が、世界とどう対峙するのかを見守ればいい。

 

内容よりも結果が大事という人もいると思う。

でも僕は、勝負ではなく、試合内容に興奮したい。