情熱のカムアラウンド

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サアはマンUを救えるか?

 先日行われた、マンチェスター・ユナイテッドセルティックの一戦。マンチェスター・ユナイテッドは、思わぬ苦戦を強いられた。DF陣の甘さ。判定に苛立ち、低調なプレーのルーニー。そんな波に乗り切れないマンチェスター・ユナイテッドを救ったのは、ファンニステルローイが去った後のフランス人エースストライカー、ルイ・サアの力強いプレーだった。

 

 この試合で、サアは2得点。前半30分にギグスが得たPKを落ち着いて決め、10分後の前半40分には、スコールズからのパスを受けて、2点目を決めている。そして、もっとも注目すべきは、後半2分のマンチェスター・ユナイテッドの決勝点のシーンである。

 この決勝点のシーン。記録上では、〈サアのシュートがGKボルツにはじかれたところを、途中出場のスールシャールが押し込んでゴール〉となっている。しかし、“サアのシュートがGKボルツにはじかれた”と“スールシャールが押し込んでゴール”の間に、サアのストライカーとしての飛躍を感じさせるプレーが隠れている。

 

 セルティックGKボルツがはじいたボールは、実はスールシャールの前ではなく、サアの斜め右前方にバウンドしてきた。この時サアは、遅れてシュートブロックにきていたセルティックDF2人のうち、片方のスライディングにあい、体勢を崩していた。

しかし、ここからサアが粘りを見せる。サアは、間髪いれず、崩れた体勢のまま左足一本でジャンプし、ボールへ飛びつく。この素早い反応に、DFの一人が追い付けない。サアは、ジャンプしながら空手の上段蹴りのように右足を伸ばす。ここで、残っていたもう一人のDFのスライディングが、ジャンプした左足に入る。サアは空中で再びバランスを崩すが、執念でボールに触れた。スールシャールの前に転がってきたのは、まさにこのボールだった。サア自身はシュートのつもりだったのだろう。バランスを崩した分、勢いも弱く、枠には飛ばなかった。しかし、決勝点を生んだのは、紛れもなくサアのゴール前での頑張りだった。

 

今年のマンチェスター・ユナイテッドの前評判は、決して高くない。その理由の一つが、他のビッグクラブに比べて、FWにビッグネームがいないことである。バルセロナエトーチェルシーシェフチェンコアーセナルのアンリ。そして、昨年までマンチェスター・ユナイテッドに在籍していたファンニステルローイ(現レアル・マドリード)。彼らと同じ働きを、サアに期待するのは難しいと考えられているからだ。

サアは、元々スピードとテクニックに定評のある選手である。しかし、決勝点のシーンは、彼が今までのスタイルに加え、ゴール前での力強さを身に着けつつあることを証明している。どんな体勢になっても、シュートまで持ち込む力強さ。ゴール前の混戦で負けない球際の強さ。ファンニステルローイが去ったことによる、サアのエースストライカーとしての自覚が、彼の成長を促し、プレーの幅を広げているような気がした。

 

ファンニステルローイがいなくなったって?」

「問題ないよ、うちにはサアがいるんだ」

そう誇らしげに話すサポーターの姿が、もしかしたら今年見られるのかもしれない。