情熱のカムアラウンド

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山本昌~素顔の行方~

 プロ23年目の今シーズンは、山本昌にとって充実したシーズンではないだろうか。特にペナントレース終盤の活躍は、目を見張るものがあった。チームが阪神の猛烈な追い上げにあっていた9月。2度の阪神との直接対決で、いずれも先発で登板し勝利。そのうちの1試合では、プロ野球最年長記録となる41歳1ヶ月でのノーヒットノーランを達成している。若手の先発投手が終盤に調子を落とすなか、1年間先発ローテーションを外れることなく投げ続け、2年ぶりのリーグ優勝に貢献した。

 

 今回の日本シリーズは、山本昌にとって4度目の日本シリーズになる。そして2年前に見せた、あの悔しい顔以来の…。

 

 2004年10月24日ナゴヤドーム日本シリーズ第6戦。

 

 3勝2敗と50年ぶりの日本一に王手をかけて、名古屋に戻ってきた第6戦。先発は、中日-山本昌、西武-松坂大輔山本昌は、立ち上がりに1点を失い、その後もピンチを迎えるが、要所で踏ん張り追加点を許さない。打線は、2回と4回に松坂から1点ずつ取り、2-1で中日がリード。そして6回表西武の攻撃を迎えた。

 この回の先頭打者カブレラが2塁打を放ち、無死2塁で和田一浩が打席に入った。フルカウントから和田がファウルで粘った後の10球目。山本昌が内角を狙ったスライダーは、少し甘めに入った。和田の振り抜いた打球は、左中間スタンドに消える。逆転の2ランホームランだった。

 

 私は、和田にホームランを打たれたときの山本昌の顔が、今も忘れられずに強く印象に残っている。最近は、この日対戦した松坂を含め、打たれてもあえて表情を崩さず、ポーカーフェイスを保って気持ちをコントロールする投手も多い。そのことも強く印象に残った要因かもしれない。しかし、打球の行方を見届けた後に、歯を食いしばり顔をゆがめて悔しがったその姿。それは、私がそのシーズンに見た投手の中で、最も悔しさをあらわにした投手の姿だった。

 

 結局、山本昌はこの回途中で降板。この試合で力投を見せた松坂は日本シリーズで自身初めてとなる勝利をあげた。逆王手をかけた西武は、続く第7戦を今シリーズのMVPとなる石井貴の好投でものにし、12年ぶりの日本一に輝いた。

 

 実は、松坂と同様に、山本昌日本シリーズで勝ったことがなかった。あの悔しい顔は、山本昌もまた相当の気持ちでこの試合に臨んでいたことを物語っていたように思う。しかし、その顔を見たとき、私は不謹慎にも少し嬉しかったことを記憶している。ああ、この悔しさが山本昌の選手寿命を延ばしてくれるんじゃないだろうか、と。だから、私はその後、どこかで西武が日本一になってくれることを願っていた。日本シリーズで勝てず、日本一にもなれなかった悔しさが、200勝という大記録に向かっている山本昌のこれからの原動力となることを期待して…。

 

 あれから2年。

 

 40歳を迎える選手としては異例の複数年契約を結び、2年間で18の勝ち星を積み上げた。現在191勝。200勝へのカウントダウンは1ケタとなった。今年は、ノーヒットノーランも達成した。複数年契約を結んだ際に、「200勝もそうだけど、日本一になりたい」と語った男が、2年越しの日本一を目指し、日本シリーズに臨む。

 

 順当にいけば、山本昌日本シリーズ5度目となる先発マウンドに立つだろう。日本シリーズの舞台で勝利投手になった時、山本昌はどんな素顔を見せてくれるのだろうか。そして日本一を手にしたときは? その姿を思い浮かべるだけで私は今からワクワクしている。2年越しの素顔の行方を。