情熱のカムアラウンド

sports blog 情熱のカムアラウンド

心の感じるままに。カーリングをメインに様々なスポーツを追いかけて。駆け出しスポーツライターの人生奮闘ブログ。

岡部さんのファインプレー~凱旋門賞の中継から~

 最近、やたらと本質から逸脱したテレビのスポーツ放送に、嫌気がさしています。それでもスポーツを見ずにはいられない悲しい性分。でも、この間の深夜に放送された、競馬の凱旋門賞の中継では、ちょっと優しい気持ちにさせてもらいました。それは、ゲスト解説の岡部幸雄さんの何気ない言葉です。

 

 岡部さんが、アナウンサーに有力馬に関して聞かれたときのことです。普通なら、「この馬は…」と話すところ。でも、岡部さんは、「この馬は…」ではなく、「彼は…」と話していました。つまり、出走馬に対して、「彼」という言葉を使っていたのです。

 

 岡部さんといえば、去年引退するまで、数々の輝かしい功績を残した名ジョッキーです。ジョッキーにとって、馬は苦楽を共にするいとおしいパートナー。岡部さんの馬に対するそんな優しい気持ちが、自然に「彼」という言葉を使わせたのでしょう。レース後には、3着で終えたディープインパクトが引き上げてくる姿を見て、「問題ないみたいですね。僕達は彼らが無事でレースを終えてくれること。それだけなんですよ」とも話しています。

 

 スポーツの中継において、アナウンサーや解説者の言動や話し振り(声のトーンなど)は、その試合の印象を左右する大きな魔力を持っています。試合の素晴らしさをより引き立たせてくれることもあれば、過剰な反応で半減させてしまうこともあります。最近はどうも後者の傾向のほうが、多い気がします。

 

 今回の凱旋門賞の中継は、全体としてどこか優しい空気に包まれていたような感じを受けました。世間でも、残念だったけどディープインパクトはよく頑張った的な反応が多いようです。もちろん、一番の功労者はディープインパクトです。そして、岡部さんの優しい言葉は、凱旋門賞の中継における隠れたファインプレーでした。