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自分を信じて、仲間を信じて〜カーリング女子世界選手権2日目〜

「自分を信じて、仲間を信じて、きちんと私が決めるぞという気持ちで臨みました(小笠原選手)」

 

カーリング女子世界選手権2日目。日本チームは世界ランク2位の強豪スウェーデンを6−5で倒し、今大会初勝利をあげ、通算成績を1勝1敗のタイに戻した。

 

「何やってんだ」

 

開幕ゲームとなった昨日のスイス戦。選手につけられている小型のマイクから、スキップ(主将)小笠原選手の声が聞こえてきた。お互いアイスを読むのに苦労しながら、最後のスキップ勝負になった試合。小笠原選手はチャンスをものにする1投を、ピンチをしのぐ1投を決められなかった。

 

ソチ五輪の5位が幻でなかったという試合をしたい」

 

2月の全日本選手権を制した時も、世界選手権前日の記者会見でも、小笠原選手はこのコメントを口にしてきた。ソチ五輪最終予選で最後の切符を勝ち取った日本は、メダルまであと1歩にせまる5位の成績を残した。今回の世界選手権は船山選手を産休で欠きながらも、新しいメンバーを迎えさらに上を目指す戦い。自分達の確かな実力を実感したい戦いでもある。

 

しかし、乗り切れなかった。地元札幌での開催となった試合。もちろん緊張がなかったと言えば嘘になる。声を絶えず掛け合い、必死にアイスの状況を読み取ろうと努めた。試合の流れを引き戻そうと投げた。しかし、雰囲気に飲まれたのかアイスに戸惑っているのか、チーム全体で、ウォー(掃くな)の声も、ヤップ(掃け)の声も普段より小さい。

 

「結構(アイスが)滑るね」

「思ったより(ストーンが)曲がる」

アイスを読みきれない言葉は、終盤エンドまで続いた。

 

相手のスイスは世界ランク3位の強豪ではある。しかし、決して調子は良くなかった。長くスキップを努めたオット選手の後を継いだペーツ選手も、小笠原選手と同様ショットの精度が上がらなかった。日本は、サードまでのセットアップを有利に進めたように思えたものの、細かい精度までには至らない。後半エンドは、得意のテイクショット(相手のストーンに当ててはじくショット)で活路を開き始めたスイスを相手に後手に回った。

 

勝てた試合だった。普段通りの実力を出せば勝てた。そのいらだちが自分に「何やってんだ」と言わせた。試合後、小笠原選手は、

「みんながよく投げてくれたのに、私が決めきれなかった」

「私の責任です」

と自分を責めた。その一方で、

「予選は11試合あるので、1つ負けたくらいでくよくよしていられない」

と、悔しさを力に変えるコメントを残して会場を後にした。

 

そして、今日のスウェーデン戦。いつもの大きな掛け声が戻っていた。大きな声が出ていることで、気持ちが前に向いて集中力が増しているように見えた。共に初戦を落として負けられない1戦。第1エンドから、不利な先攻にも関わらず、ガードストーンを置いて攻めに出たのは日本だった。

 

相手のミスを待つのではなく、先手先手で仕掛けて、ドローショット(ストーンを置きにいくショット)に苦労するスウェーデンを攻めた。スウェーデンの調子が悪かったのも事実だが、攻め続けた姿勢が、スウェーデンに難しいショットを選択させ、最後の小笠原選手がストレスの少ないショットを選択できる状況を作った。リード近江谷選手は安定したショットでガードストーン(進路を邪魔するストーン)を作り、ドローショットを決めた。セカンド小野寺選手は、威力充分のテイクショットで相手のセットアップを崩し続けた。サード吉村選手の精度の高いドローショットとテイクショットは会場を沸かせた。そして、小笠原選手は3人がつないだショットを確実に得点に結びつけた。

 

アイスの読みも早かった。「少し中(にストーンが入った)」というようなショットの精度に関する言葉はあっても、「(ストーンが)止まる」「(アイスが)重い」「(ストーンが)曲がる」といったアイスに戸惑うような言葉が試合終盤まで続く事はなかった。6−5という得点、ショット成功率のデータ以上に、日本が圧倒した勝利だった。

 

試合後、吉村選手のコメント。

「相手より先にアイスを読んで、相手よりいいショットができた」

「緊張感もあったけどホッとした気持ちです」

小笠原選手のコメント。

「昨日はすごく悔しかった」

「緊張というよりはしっかり投げたいという気持ちだった」

 

序盤に、世界ランク上位の強豪との3連戦となっている日本。今日2試合目となる夜の試合は、世界ランク4位のスコットランド。固さがとれ、本来のカーリングを取り戻した日本に期待したい。