情熱のカムアラウンド

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福原愛の挑戦〜いよいよ世界卓球2015開幕〜

いよいよ今日、世界卓球2015が中国の蘇州で開幕します。昨年は団体戦でしたが、今年は個人戦(シングルス、ダブルス、混合ダブルス)での戦いです。

 

注目が集まっている、世界ランク5位の石川佳純のシングルス。「みうみまコンビ」で有名になった平野美宇伊藤美誠の中学生ダブルス。男子も世界ランク5位の水谷隼が虎視眈々と打倒中国、そしてメダルを狙っています。

 

そして、私は、現在世界ランク8位、初代天才卓球少女こと福原愛の戦いを一番楽しみにしています。シングルスに関して言えば、中国選手を破ってメダルを獲得する可能性は、彼女が一番あるのではないかなと思っています。2003年に14歳の若さで世界卓球に出場してから10数年。打倒中国を目指し取り組んできた彼女の卓球は、今、限りなく完成の域に近づいているからです。

 

デビュー当時から、テンポの速さと抜群の打球感覚は、中国選手にも通用していました。しかし、中国選手の打球の強さを抑えきれない、フォアハンドの威力に欠けるといったパワー不足が、打倒中国の壁を阻んできました。そこから、彼女はパワー強化に取り組みます。パワーで中国選手を凌駕するためではなく、そのパワーに耐えうる、決めきれるパワーをつける為の強化。その成果は着実に現れてきました。彼女のフォアハンドは、スピード、威力、回転量ともに改善され、また相手の打球を抑える力強さも備わっていったのです。

 

しかしその弱点強化が、元来のテンポの速いプレースタイルのリズムを狂わせます。しなやかな選手が、筋力強化の末にそのしなやかさを失うように。抜群の打球感覚をもち、本来ミスの少ない彼女が、そのズレに苦しみました。パワーとスピードの折り合い。それは、一番厄介であり、超えなければいけない壁。かなりの年月を費やす大変な作業でした。

 

しかし、2012年の全日本選手権で優勝した際には、ようやく折り合いがついてきました。その年のロンドン五輪では、シングルスは準々決勝で当時世界ランク1位の丁寧(中国)に敗れたものの、団体戦の準決勝では、石川がシングルス3位決定戦で敗れた銅メダリストのフェン・ティアンウェイ(シンガポール)に勝利し、日本卓球界初のメダル獲得に貢献します。長所であるスピードと打球感覚を損なう事なく、弱点のパワー不足を克服した彼女の姿がありました。

 

しかし、今度は怪我との戦いが待っていました。ロンドン五輪後は右肘の手術、2014年の全日本選手権後には左足の疲労骨折、今年の全日本選手権も腰椎の故障で欠場。自身の卓球が完成期を迎えつつある中で大舞台に出場できないもどかしさは、どれほどのものだったでしょう。それでも、2014年アジア大会団体戦決勝では、当時世界ランク2位で一度も勝ったことがなかった丁寧を3-1で撃破しています。それは、彼女の歩んできた道が決して間違ってなかった事を証明する鮮やかな快勝劇でした。

 

 

 

そして今。ここ数年の怪我を乗り越え、福原愛が2年ぶりに世界卓球の舞台に立ちます。「今は早くコートに立ちたいという気持ちがすごく強い」と、気持ちをはやらせるコメントが順調な仕上がりを期待させます。パワー不足の壁にぶつかり、パワーとスピードの折り合いに苦労し、ようやく訪れた充実の時に味わった怪我との戦い。中国の壁を破る為に重ねてきた10数年の紆余曲折が、繊細さを感じた彼女の卓球を、随分とたくましくさせました。

「厳しい1年を乗り越えてここに立つことができている。そういうプラスの気持ちのほうが大きいです」

もちろん、プロセスだけで彼女を評価する気はありません。そんなセンチメンタリズムを無視したって、完成期を迎えつつある彼女のプレーは、卓球の面白さを存分に感じさせてくれることでしょう。個人的には、中国選手と当たるまでの戦いが一番のキーとなるのではないかと思います。そこで勢いに乗れれば……。彼女のキャリアの中で、今が一番打倒中国に近づいています。打倒中国、そしてメダルへ。

 

機は熟しています。愛ちゃん、加油!!