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打倒中国行きのチケットは彼女らが持っている〜世界卓球2015女子〜

打倒中国というより、打倒中国“まで”が遠い。

世界卓球2015の女子の戦いを見た素直な感想だ。

 

とにかくカットマンが多い。

 

カットマンというのは、相手の前進回転をかけたドライブボールやスマッシュボールに対して、後陣で下回転をかけて返球をする事を主戦とする守備重視型の選手。この戦型を苦手とする選手は多い。私も昔卓球をやっていたが、最後まで苦手意識を払拭する事ができなかったが、このカットマンだ。

 

その理由としては、まず攻撃型の選手に比べて絶対数が少ない。野球で言えば、サイドスローアンダースローの投手。絶対数が少ないから、当然対戦経験も多く得られない。攻撃型の選手と戦う事を常としているカットマンと、普段カットマンと対戦する事が少ない攻撃型の選手。稀少であるがゆえの優位性がある。

 

そして見ている人の想像以上に、カットマンとの戦い方は、攻撃型とのそれとは全く異なる。はじめから相手が守備に徹してくれるのならば、自分に攻撃権があるのだから有利ではないかと思う人もいると思う。しかし、そこは守備を主戦とするカットマン。打ち破るのは容易ではない。相手の攻撃リズムを崩す為の攻撃的な守備を施してミスを誘ってくる。点数が競い合い、ミスの許されない場面になればなるほどカットマンの真骨頂。ミスをして腕の振りが怪しくなり、自信を失いかけた時に、「さあ、打っておいで」と誘ってくるカットマンの返球程イヤなものはない。

 

そして、相手が弱気になって返球が甘くなれば、すかさず攻撃に転じて逆襲してくる。「カットマンは守備をしてくる」と思い込んでいるからこそ、意表をついた攻撃は想像以上の威力を発揮する。しかも、相手のダメージは大きい。甘いボールは逆襲されるという警戒が、厳しい返球をしなければならないというプレッシャーを生む。こうなると、精神的な優位性は、完全にカットマンのもの。カットマンが攻撃されているように見えても、実のところ追い込まれているのは攻撃型の選手という図式になる。

 

今大会、こと女子に関してはカットマンが予想以上に多かった。以前なら、韓国の選手とヨーロッパに数人いたぐらいの感覚だった。しかし、今大会はヨーロッパのカットマンも増えた感があるし、中国にも世界ランク一桁のカットマンがいる。しかも、いずれも苦手意識を抱えたままでは勝利が難しいような実力者だ。ここまで多いと、中国のトップ選手と当たるまでにカットマンと当たらない確率の方が低いかもしれない。「みうみま」こと平野・伊藤組が負けたのもカットマンダブルス(このカットマンダブルスは準決勝まで勝ち進んだ)。シングルスで福原愛に勝ったビレンコ選手もカットマンである。伊藤美誠がベスト8まで勝ち残り、中国の李暁霞選手と戦えたのは、その前に福原愛を破ったビレンコ選手に勝っていたからである。

 

2012ロンドン五輪団体で、中国に次ぐ銀メダル。昨年の世界卓球団体も中国に次ぐ銀メダル。私自身もどこかで、あとは中国の壁を破るだけだと思っていた。それは大きな勘違いだったと反省している。忘れていた。打倒中国の目の前に立ちふさがるのは、並みいるカットマンたちだ。リオ五輪はもう来年。まずは、今まで以上にカットマン対策に力を入れ、少しでも苦手意識を克服することが優先課題だろう。決して簡単な作業ではないが、カットマンに当たらないという運にかけるのは、今となってはあまりにリスクが多すぎる。

 

打倒中国行きのチケットは彼女らが持っているのだ。