情熱のカムアラウンド

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無風状態では当確ランプはつけられない 注視したい守護神達の奮起

「最終予選では1つのミスが命取りになるというのは、もちろんわかっていたが、起こってしまった」

 (UAE戦後の長谷部誠のインタビューより)

 

W杯最終予選では1つのミスが命取りになる。その意識が実感に変わったのが、まだ9試合も残している初戦だったのは、不幸中の幸い。過去のデータでは、初戦を落とすとW杯に出場できないとか? それでも初戦で良かったと思う。

 

最終予選が大量点を望めない戦いであること。それは、痛いほど伝わった。なんせ、あれほど一方的で決定的シーンを作り続けたタイ戦でも、2点を取るのが精一杯なのだから。

 

ならば、そろそろ消去法ではなく、存在感で他の候補を引き離すGKが出てきてほしい。

はっきり言って、ブラジルW杯以降の正GKは決め手に欠ける。

 

ただ、今シーズンは、代表の正GK争いが熱くなりそうだと楽しみにしていた。

 

昨シーズンの一番手は代表実績から見ると西川周作(浦和)。ただ、W杯アジア2次予選の相手では、その力量は量りかねた。そして気になったのは、売りにしている足元の技術以上に、JリーグACLで露呈した判断の軽さともとれる致命的なミス。足元の技術は確かにGKの評価基準の1つだが、決してセービングやコーチング、ポジショニング、判断力などに先んじるものではない、と僕は思っている。その点、昨シーズンを通じて安定したパフォーマンスを見せた東口順昭(ガ大阪)は、代表出場こそ1試合だったが一番手に躍り出る可能性を感じた。アジアカップまで一番手だった川島永嗣は、スタンダール・リエージュ(ベルギー)でレギュラーを外れ、退団後も移籍先が中々決まらない苦しいシーズンを過ごし、そのパフォーマンスは未知数。

 

そして、今シーズン。西川周作東口順昭は、ACLに出場してアピール合戦になるだろう。所属クラブが決まった川島永嗣は結果を求められるシーズン。それだけではない。今シーズンは五輪もある。五輪代表の中村航輔(柏)や櫛引政敏(鹿島)は、五輪最終予選を勝ち抜き本大会に進めば、大きなアピールの機会を得る。もちろん、上記の選手達が低調ならば、ACLに出場する林卓人(広島)や秋元陽太(F東京)、また林彰洋(鳥栖)をはじめJリーグでプレーをする他の選手にもチャンスはある。

 

だから、楽しみにしていた。最終予選を控え、混沌とした代表正GK争いから抜け出すのは誰なのか? と。

しかし、ここまでその楽しみは残念ながら肩すかしを食らっている。

 

ACLに参加したJクラブはガンバ大阪サンフレッチェ広島が予選敗退。浦和レッズFC東京も決勝トーナメント1回戦で敗退してしまった。大会結果とGKの出来は一緒に考えられないとしても、しびれるような戦いが5月のうちに終わりを迎えてしまったのは残念。西川周作は、磐田戦で軽率なプレーから失点シーンを作り、ハリルホジッチから足技自粛を促されるなど、安定感に関してはまだ疑問符が残るまま。追いかける立場の東口順昭も、昨年よりも精彩を欠くパフォーマンスでチャンスを活かせていない。川島永嗣は、所属先のダンディー・ユナイテッド(スコットランド)で途中から定位置をつかむもクラブは降格。新たに移籍したメス(フランス)では第3GKの扱いになっている。

 

となれば、中村航輔櫛引政敏の勢いに期待したいところ。しかし、五輪本大会に進んだ五輪代表はグループリーグで敗退。2戦目以降スタメンで出場した中村航輔に関しては、一定のパフォーマンスを見せたように思うが、他の代表候補を追いやるほどの強烈なインパクトとまでは言い切れない。Jリーグの試合を見ても、出色のパフォーマンスで目を引くGKを、僕は探すことができなかった。

 

かくして、さしたる変化もなく、W杯アジア最終予選が始まってしまった。ホームで敗戦し、現状1勝1敗の日本の滑り出しは決して順調とはいえない。

 

ただ、だからこそ西川周作以外の守護神達にもチャンスが残されている。

 

西川周作がW杯アジア最終予選ゴールマウスを勝ち取った過程は、期待した熾烈なアピール合戦の末ではなく思った以上の無風状態。当確ランプをつけるにはまだ早いとみる。代表の序列は確かに存在するだろうが、現時点ではこじ開けられない差とまでは感じない。GKコーチをすげ替えたハリルホジッチがまだ満足しているとも考えにくい。それどころか、今後の結果いかんではハリルホジッチの進退だってわからない。もし、解任となれば選手選考にも変化が生まれる可能性がある。

 

西川周作を含めた日本の守護神達のいっそうの奮起を期待しつつ、もうしばらく代表正GK争いから目が離せないシーズンが続きそうだ。