情熱のカムアラウンド

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「-2(アンダーツー)」から「+2(プラスツー)」へ~世界バレーから~

 昨日の世界バレー第2次ラウンド、セルビア・モンテネグロ戦。終盤に見せた日本の集中力は見事でした。序盤とは打って変わった思い切りのいいサービス。相手スパイクに対する、しつこいブロックや粘り強く拾うレシーブ。そして拾ったボールを得点に結びつけた、切れのあるスパイク。第4、5セット終盤の競り合いを制した場面には、日本が今季新たにテーマに掲げた、「-2(アンダーツー)」の精神がよく現れていました。

 

 「3Dバレー」や「変化とスピード」など毎年テーマを掲げてきた柳本ジャパンが、今季新たに掲げたテーマ、「-2(アンダーツー)」。これは、それぞれの選手が目に見えないものも含め、ミスを2つずつ減らしていこうという意味が込められています。昨年の日本は、世界の強豪国に対して、接戦はするけれどあと1、2点のところで届かない試合が多くありました。その教訓から、今あるものをより確実にして、一つ一つのプレーの精度を高めることに重点を置いています。防げるべき失点を防ごう。取れるべき点数をしっかり取ろう。そして、その積み重ねが、強豪国との接戦の中で必ず活きてくるはずだと。これは、北京五輪で悲願のメダル獲得を目指す、日本女子バレーの土台になるだろうとは思います。

 

 しかし、私はその一方で「-2(アンダーツー)」というテーマが一つの限界にきている感じを受けたのも事実です。世界の強豪国に勝つには、五輪でメダルを取るには、プラスアルファが必要ではないだろうか? それを最も強く感じた試合が、第2次ラウンド初戦のキューバとの試合です。

 

 キューバというチームは、抜群の破壊力を誇る攻撃が特徴のチームです。しかしその反面、細やかなプレーや、確実性に欠けるところがあります。簡単に言えば、強いんだけど大雑把でミスも多いというのがキューバというチームです。強い相手に対して、より高いプレーの確実性で対抗しようというのが「-2(アンダーツー)」というテーマ。そういう意味で、キューバ戦はまさに「-2(アンダーツー)」の試金石となる試合だったと思います。

 

 この試合のキューバは、序盤からミスを連発。それに乗じて日本が1セット目を取ります。しかし、2セット目以降、日本のスパイクはことごとくキューバの網に引っかかります。せっかく相手のスパイクを拾っても、そこから決めることができません。小山修加落合真理がまともに打ったスパイクは、待ってましたとばかりにキューバに止められてしまう。そこが機能しないと、結局は高橋みゆき頼りになってしまいます。相手にマークされながらも竹下佳江のあげたトスを打ち続ける高橋みゆきの姿には、悲壮感すら漂っていました。サーブレシーブがもう少ししっかりしていれば、センター線がもっと機能したはずだという意見もあると思います。確かに守備専門のリベロという意味では、菅山かおるにはもう少し頑張って欲しいとは思ったし、サーブレシーブが乱された場面はありました。しかし、キューバに比べれば日本のレシーブはセッターに返っています。日本のミスはキューバよりぐっと少なかった。それでも勝てなかった。それがキューバ戦だったのです。

 

 前述したように、今までのプレーの完成度を上げることは、五輪でメダル獲得を目指す、日本女子バレーの土台となることは確かです。しかし、それだけではトップには追い付けないこともまた事実ではないでしょうか。日本のミスは確かに少ない。しかし、それ以上にミスの多いキューバに負けてしまった。ミスを減らすだけでは勝てない。バックアタックを打てる選手を増やす。得意不得意なく両コースに打ち分ける力。確実にブロックアウトを取れるような技術。より強力なサービスを身に付ける。いろんなスパイクに合わせられるブロックの技術etc…。これまでの「-2(アンダーツー)」に加え、今まで取れなかった点を取る能力、今までになかった技術を増やす「+2(プラスツー)」という考え方を取り入れる時期にきているのではないかと思うのです。

 

 今となっては、第1次ラウンド初戦でチャイニーズタイペイに負けたことが重く響いていますが、セルビア・モンテネグロ戦の勝利によって日本は、わずかながらメダル獲得に必要なファイナルラウンド(各グループ上位2チームによる1~4位決定戦)進出の可能性を残しました。ファイナルラウンドに進めなかったとしても、5~8位決定戦に進めば、中国とぶつかることがあるかもしれませんし、もう一度キューバと戦うことになるかもしれません。今日のイタリア戦を含め、世界の強豪と戦う残りの試合は、日本にとって今後何が必要となるのかを示してくれる貴重な試合となってくれそうです。