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ドルトムントが香川を救い、香川がドルトムントを救う日

やはり、香川真司ドルトムントの関係は特別なのだなと改めて感じます。

例え、マンUで不遇の時を過ごし、ドルトムントに戻って結果の出ない日々が続いていたとしても。

 

かつて、ドルトムントブンデスリーガ2連覇に、大きく貢献した香川。香川を、名将ファーガソンに誘われるまでに輝かせたドルトムント。相思相愛だった両者は今シーズン苦しい時を迎えています。残留争いのドルトムントと、一時の輝きを失い悩める香川。

 

しかし今、ドルトムントのサッカーが香川を救いはじめているんじゃないか? 先日の対フライブルグ戦のアシストシーンを見て、そう感じました。

 

話をアジアカップに戻します。

 

UAE戦後、至る所で香川に対する批判を目にしました。しかし、アジアカップ全体を見れば、香川は決して悪くなかったと私は考えています。運動量も増えて”消える”場面が減り、ゲームの組み立てに多く参加した、イラク戦とヨルダン戦のパフォーマンスは、むしろ今後に期待を抱かせる内容でした。

 

そのパフォーマンスを引き出した一番の要因は、試合全体を通して守備意識が向上した事、にあります。相手のボールホルダーにプレッシャーをかける場面が増えました。時として自分がプレスの先鋒となる。チームメイトのプレスに加担して一緒にボールを奪いにいく。チームメイトのプレスに連動してパスの出しどこを潰しにいく。少し雑な言い方かもしれませんが、何となく守備をしている風だったのが、しっかりと守備に参加するようになりました。

 

守備意識の向上により、必然的に運動量が増えました。そして、攻撃面に好循環をもたらします。自分のポジションでパスコースを塞ぐのと違い、時にポジションの領域を超えてプレッシャーをかけにいく事で、色んな場所、場面に顔を出す機会が増えました。それによって、味方がボールを奪えば、ボールの近くにいる事ができ、パスを受ける場面が多くなっています。

 

また、いろんな場所に動いている分、相手のマークも外れやすく、いい状態でパスを受ける事ができていました。その余裕から、プレーの選択肢が増え、状況判断もそのスピードも改善されました。香川の状況判断とスピードの改善は、自身の球離れを良くし、チーム全体のリズムにも好影響を与えていたように感じました。

 

対ヨルダン戦後にはこんなコメントを残しています。

「やっぱりチームがあっての自分だと思っているし、それを再認識した」

「まずはハードワークして、やっていきたい」

 

香川の守備意識の向上は、ポジションの変化と指揮官が変わったことによる役割と要求、というのが一番の要因でしょう。まだ試合を通して持続してできているとまでいきませんし、対UAE戦では足りませんでした(UAE戦の敗因と香川を結びつけているわけではありません)。しかし、守備に参加した分、運動量が増え、いい状態でパスを受ける回数が多くなった事。他人を助けるプレーができた結果、自分も活きるようになった事。その経験は、決して小さいものではないでしょう。

 

そして、対フライブルグ戦でのアシストシーン。

 

相手サイドバックが自陣左サイドでドルトムントのこぼれ球を拾う。そこに香川がすぐさまプレッシャーをかけにいく。プレッシャーを受けて苦し紛れに蹴りだしたボールをドルトムントが跳ね返す。そのボールはプレッシャーをかけていた香川のところに。香川はワンタッチで味方にパスを出した後、止まる事なく中央へと走り出していく。相手左サイドを崩した味方は、中央でマークを外していた香川へパス。香川は、ペナルティエリアで更にフリーになっていたFWオーバメヤンにアシストとなるパスを出す。

 

これは、香川の守備意識の向上が垣間見えたシーンでもあり、ドルトムントのチームとしての特徴がよく現れたシーンでもあります。ドルトムントのサッカーは「ゲーゲンプレッシング」と呼ばれる、前線からのハイプレッシャーで相手からボールを奪って、その勢いそのままに波状攻撃をしかけるサッカーです。その為、前線にいる選手には、守備意識の高さと運動量が求められます。ドルトムントのそのスタイルが、香川に守備意識の高さと運動量を求め、その一員として役割を果たす事が、香川自身を活かす。ドルトムントのサッカーが香川を救いはじめているんじゃないか? と感じたのはそのためです。

 

もちろん、香川自身がその事に気付いているかはわかりません。感覚を重要視しているコメントを見ると、まだ気付いていないのかもしれません。しかし、もし気付いているのなら、気付きはじめているとしたら、輝きを取り戻すのにそう時間はかからないでしょう。パフォーマンスを落とした原因さえわかれば、少なくとも同じ状況に陥った時にその対処法は心得ています。そうなれば、香川は好調時の自分を取り戻すだけではなく、以前よりもたくましく進化した自分を手に入れる事ができるはずです。

 

はじめてドルトムントにやってきた時、チームメイトに認められる為に、運動量惜しむ事なく必死に走り続けパスを求め続けたことでしょう。必死に守備に参加したことでしょう。必死に味方を活かそうとしたことでしょう。今は、スタミナが90分持たなくてもいいから、惜しむことなく走り続けてほしい。足りないスタミナはつければいい。

 

ドルトムントが香川を救い、香川がドルトムントを救う日。その時が、近づいてきている事を私は期待しています。