情熱のカムアラウンド

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心の感じるままに。カーリングをメインに様々なスポーツを追いかけて。駆け出しスポーツライターの人生奮闘ブログ。

最強には最高で~早慶戦に見た一筋の光~

 「勝利はしましたが、内容的には修正する部分がまだまだたくさんありました」

 「個々の能力は出ましたけれども、形できれいに取るという部分がこの試合では少なかった」

 「自信にする部分と、もう一度自分達を見つめなおして反省する部分を、分けて考えていきたい」

 

 11月23日に行われた大学ラグビー早慶戦。勝利監督インタビューに答える早稲田の中竹監督から出る言葉は、反省ばかりでした。結果は、41‐26で早稲田の勝利。対抗戦の連勝を42に伸ばし、6年連続の対抗戦全勝優勝に王手を掛けた早稲田でしたが、印象に残ったのは慶応の選手一丸となったひたむきなラグビーでした。

 

 大学ラグビーにおいて長い伝統を持つ、早稲田、明治、慶応の三校。その戦い方にも各々の伝統が息づいています。早稲田には、見る者を魅了するバックスの華麗なオープン攻撃があります。明治には、見る者をうならすフォワードの迫力ある縦突進があります。慶応には、早稲田ほどの華麗なバックスも、明治並みの迫力あるフォワードもありません。その慶応の伝統は、「魂のタックル」に代表される激しいディフェンスです。体格や技術で上回る相手に対し、ひたむきにボールを追いかけて突破を阻む。そのさまは、どんなプレーよりも見る者の心を打ちます。「気持ちで負けないことの大切さ」を、改めて感じるのが慶応の試合です。

 

 この日の試合、慶応のマイボールスクラムは、体格で一回り上回る早稲田のフォワードにめくり挙げられるように崩され、マイボールラインアウトは、約半分を早稲田に奪われました。慶応が「受けてしまった(青貫主将)」後半は、日本代表キャップをもつセンター今村やフルバック五郎丸をはじめとする、早稲田の強力な個々のタレントが、その豊かな才能を発揮します。普通のチームならもっと点差がついてもおかしくない状況でした。

 

 そんな中で、前半は14‐8とリードし、「これはひょっとして」と思わせ、後半の半ばまで接戦を演じたのは、慶応伝統の粘り強いディフェンスがあったからです。ハードタックルは早稲田の選手に突き刺さり、早稲田フォワードのモール攻撃は、慶応のディフェンスの前に思うような前進ができず、崩されてマイボールを失う場面が目立ちました。イーブンボールとなったラックへの集散も慶応のほうが上回っていました。試合終了間際には、劣勢を強いられた慶応フォワードが、「傷心のフォワードに自信を与えただろう(松永監督)」モールトライを早稲田から奪う意地を見せます。激しく、ひたむきに、心はひとつに。慶応の気迫溢れる戦いぶりは、負けてなお「慶応ラグビーここにあり」を強烈に感じさせるものでした。

 

 時として勝負では、最高のプレーが最強のチームを破ることがあります。慶応の松永監督は、試合後に自身のブログで、「フォワードのセットプレー(キックオフ、スクラムラインアウト)のまずさも大きな課題だが、それよりも低く激しいタックルができなかった事が、とても悔しい」とタックルの甘さを指摘しています。一見、素晴らしい出来に見えたディフェンスも、慶応側からするともっと出来たはずだという思いが強いのです。もし大学最強の早稲田に対して、慶応が納得する最高のディフェンスを見せることが出来た時は…。ぜひ大学選手権でもう一度両校の対戦を見てみたいものです。