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“素直なボクサー”宮将来の逆襲

 3日前のボクシンググランプリ、またしてもミハレスに敗れた川嶋は無念だったろうと思う。そしてこの日悔しい思いをしたボクサーがもう一人。日本代表の次鋒として登場した宮将来である。

 

 試合はドローとなったが、がっくりと肩を落とし下を向いたまま通路を引き揚げていく宮の姿が、この試合を物語っていた。終始、前に出てエスタニスラオを追いかけたが、試合をコントロールしたのは対戦相手のエスタニスラオ。距離感をつかもうとすると宮の行く手には、エスタニスラオのジャブが必ずと言っていいほど先に絡みついた。いつもの宮ならペースをつかみ始まる3Rあたりから、パンチのタイミングも合い、手数も増えてくる。しかし、先に先にと手数を出してくるエスタニスラオの老獪さがそれを狂わせたのか、宮にとってもどかしいラウンドが続いた。もどかしさからくる焦りか、「宮はカウンターが凄い」という周囲の雑音に気負ったのか、いつもより気持ち大振りに見えたカウンターは空を切った。

 何もできなかったのか? それとも何もさせてもらえなかったのか? いや、今はそれさえも判別する余裕がない。そんな後姿だった。

 

 しかし私は、宮がこの試合を自分の肥やしにして、大きく飛躍することを信じたい。なぜなら宮将来というボクサーは、「素直さ」という武器を持っているからだ。

 

 私が宮と出会ったのは、彼のデビュー戦前だったからもう6年前のことになる。私のバイト先に新人として入ってきた彼は、その人懐っこさと生来の明るさでたちまち人気者となった。プロボクサーがくると聞いて、一体どんな奴なんだろうと思ったが、とにかくよく働くし、教えたことをとても素直に聞いた。だから仕事を覚えるのも人一倍早かった。

 その姿勢はボクシングにも現れていた。ある試合後に、私が、「今日は左のボディが良かったなー、狙いだったの? 」と話しかけると、宮は、

「あっ、出てました? 今回の試合前に左のボディ練習したんすよね」

と笑顔で話した。練習で取り組んだものが、試合でしっかり出てくる。それは、この時の試合に限らずよく見る光景だった。ボクサーとしての素質はもちろんだが、彼の素直な姿勢がその吸収力を支えているのだと感じた。

 

 「素直さ」は、自分自身のプレーの反省点を見つめたり、周囲のアドバイスに耳を傾けることを助けてくれる。それ故に、壁にまともにぶつかる事もあるだろうし、アドバイスの取捨選択に迷うこともあるだろう。しかし幸いにも、宮はそれを乗り越える生来の明るさも持っている。彼の「素直さ」というスポンジが、悔しい経験を吸収しきった時、そこには数段たくましくなった宮将来がいる気がする。

 

 デビュー以来の連勝はストップしてしまったが、日本ランキングを2位まで上げてきた宮にとって、今年はこれまで以上に大事な1年となるだろう。悔しい経験は糧にして。“素直なボクサー”宮将来の逆襲をぜひ期待したい。