情熱のカムアラウンド

sports blog 情熱のカムアラウンド

心の感じるままに。カーリングをメインに様々なスポーツを追いかけて。駆け出しスポーツライターの人生奮闘ブログ。

関本賢太郎引退 代打の神様が見せてくれた「必死のパッチ」

今年のセリーグクライマックスシリーズ

 

広島戦の誤審がなければ、という人がいるのもごもっとも。

シーズンで負け越したチームがクライマックスシリーズに出場するのもどうかとも思う。

小学3年生から阪神ファンの私でも後ろめたさが多分にあった。

 

それでも、関本賢太郎の打席がまだ見られることが嬉しかった。

 

阪神代打の神様関本賢太郎

大柄な体でひときわバットを短く持つ背番号3に、僕は何度も興奮した。

 

名門天理高校からドラフト2位で入団し阪神一筋19年。

 

チームは外からの度重なる戦力補強。そのつど、関本はレギュラー争いをしてきた。求められるものも変化していった。

 

入団時には同期の浜中おさむと将来のクリーンアップを嘱望された大型内野手は、いつのまにか誰よりもバットを短く持ち、チーム1のバント技術と内野のどこでも守れるユーティリティーかつ堅実な守備を身につけていた。

 

多くの苦渋もなめただろう。好き好んで身につけたスタイルでもないだろう。プロで生き残る為、必要とされる為に。そうやって、彼が戦ってきた最後の仕事は、代打の切り札だった。

 

関本を「代打の神様」と人はいう。勝負強さはさておき、バッターボックスで見せる風貌は、神様という名とはほど遠い。むしろ巨人のプリンスだった高橋由伸の方がその名に似つかわしい。しかし、仕事ぶりとなれば勝るとも劣らない。そう、関本の打席は、神様というよりも仕事人という方が似合う。

 

阪神が低迷した暗黒時代から見続けてきた僕にとって、外から獲ってきた高年棒選手と外国人で構成された今の阪神から、以前程の興奮は得られなくなった。たまに勝つ方が毎回勝つよりも喜びが大きいと巨人ファンに言い放ち、常日頃バースを日本史上最高の助っ人と高らかに自慢し、仲田幸司と猪俣隆の登板日を楽しみにし、田村勤のストレートに酔いしれ、勝ち負け関係なく代打真弓のミッキーマウスマーチが聞ければ満足した頃に比べ、最近は、あまり試合を見なくなった。

 

そんな中で、一番好きなのが関本賢太郎の打席だった。

一番長い生え抜きということもあるけれど、何よりも関本の持つ期待感が好きだった。

 

もちろん、なんとかしてくれるという期待感もある。でも、それ以上に感じさせてくれたのは、打てなくても納得させてくれるだろうという期待感。

 

打席で全てを尽くしてくれる感があった。スタメンに名を連ねている選手達が、あっさりと凡退するのを見れば見る程、関本の意味のある打席は際立った。

 

時には、初球を鮮やかに仕留める読み。その一方で、相手のウイニングショットをファウルでしのいだり、手を出さずに見極めるしぶとさは秀逸。この一球をしのげば世界が変わることを、彼は良く知っていた。文字通り「必死のパッチ」で、彼は代打の神様であり続けた。他球団のファンからは代打関本の打席はどう映ったのだろうか、一度聞いてみたい。

 

だから、興奮し力が入った。「そうよ、見たかったのはこれよ」と思わせてくれる打席がそこにはあった。

でも、もうその打席を見ることができない。

 

巨人とのクライマックスシリーズ第3戦。1−3でリードされて迎えた最終回、連続ヒットで無死1、2塁とし、クリーンアップに打席が回った。この日の関本は、代打の神様ではなく6番関本だった。もう一人ランナーがでれば関本に打席が回る。しかし、ドラマは起こらなかった。関本はネクストバッターサークルで最後の瞬間を見守った。

 

来シーズンくらいまでは、関本がいればとその喪失感を味わうだろう。関本賢太郎の打席が見たいと恋しくなるだろう。

 

代打の神様が見せてくれた「必死のパッチ

ありがとう、そしてさようなら。あなたが見せてくれた打席に心から感謝します。