情熱のカムアラウンド

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心の感じるままに。カーリングをメインに様々なスポーツを追いかけて。駆け出しスポーツライターの人生奮闘ブログ。

拝啓 上村愛子様

 拝啓 上村愛子

 

 貴方が最高の心理状態でソチのスタートゲートに立つ為にどうしても伝えたい事があるのです。どうしても貴方にオリンピックの表彰台に立って欲しいのです。一人のスポーツを愛する人間として、真摯にモーグルに向きあってきた貴方のアスリートとしての姿勢を尊敬する一個人として。

 

 まず、今できることをしっかり出すことに集中してください。無理をして思い切るのではなく、かといって必要以上に無難に滑ろうとするのでもない。ハナ・カーニーの強さも、まさに今できることを出す事に徹しているから。大丈夫。貴方には長年にわたって高めてきた技術が、そして誰よりも経験があります。それは素晴らしい武器。

 

「メダルを取る為にはこう滑らなければいけない」

ではありません。

「今できる事をしっかりだせば、メダル(結果)はついてくる」

と考えて。

 

第一エアまでを無難ではなくしっかり滑りきって、第一エア後から第二エアまでのセクションは、必要以上に追い込まず貴方の滑りを見せるだけでいい。今できる事をしっかりと。その時、貴方は表彰台に立てるはずです。

 

 そして、自分のために滑ってください。家族・ファン・チームへの感謝を忘れない貴方の姿勢は素晴らしいです。でも、もう少しわがままに自分勝手になっていいんです。応援しくれる人達のためになんて思わずに、ただ自分のために。自分がどう映っているのかも、時間の経過も忘れてしまうくらいに目の前の試合に没頭してください。大丈夫。貴方が自分のために頑張っている姿が、結果として家族もファンもチームも喜ばせ、感動させているはずだから。

 

 最後に、私が貴方に一番伝えたいこと。

 

それは、貴方の目指すものを、「メダル」から「表彰台から見る景色」に変えて欲しいという事。

 

 貴方は今までのオリンピックでメダルへの決意を口にしてきました。オリンピックを重ねれば重ねる程にその決意は強く。しかし失礼ながら私には、その決意を口にすればする程に、貴方の表情が硬くこわばり悲壮感さえ漂っているように見えたのです。

 以前、私はトリノオリンピック後に品川で催された貴方の写真展に行きました。降り注ぐ太陽の光、鮮やかなスカイブルーの空、一面に広がる美しい雪景色。そこに映っている貴方はどれも生き生きとした表情をしていました。長野オリンピックで見せたのと変わらない笑顔で。

 

 私は思うのです。

貴方が本当に欲しいものは、目指すべきものは、メダルよりもオリンピックの表彰台からの景色なのではないか? と。

 

 貴方がソチの決勝スタートゲートに立ったとき、メダルを取りたいという気持ちではなく、表彰台から見る景色はどんなに気持ちのいいものだろうという気持ちでいたら、貴方が今まで涙でにじんで見ることのできなかったオリンピックの空を見上げる事ができるような気がします。

 

 

 勝者にしか見る事ができない景色があります。

何かを成し遂げた後の、誇らしさと痛快さが見せる素晴らしい景色。それは、メダルのようにモノとしては残りませんが、ずっと自分の心に生き続ける宝物になります。表彰台から見下ろせば、メダリストを讃える多くの観衆。そして歓声を耳にしながら顔を上げれば、そこには神々しさと清々しさの入り混じった空。

 

 貴方が表彰台で最高の素顔を見せる姿を心から願っています。

長野オリンピック後、外国へ単身修行をし、筋肉質になるのを恥ずかしながらもウエイトトレーニングの励み、いち早く回転系のエアに挑戦し、ターンの技術の習得に励んできた、そのアスリートとしての貴方の真摯な姿勢が報われますように。

 

 頑張ってください。応援しています。