情熱のカムアラウンド

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スイスの勢いとカナダの意地〜カーリング女子世界選手権決勝〜

第6エンド終了時

スイス4−0カナダ

 

勝負あったか、と思った。

 

大会最終日、スイスとカナダの決勝戦。今大会3回目となる両者の対戦。過去2試合はスイスの勝利。とはいえ、ソチ五輪金メダルにして世界ランク1位の王者カナダが、同じ相手に3度負ける姿は想像がつかない。

 

しかし、予選からここまで12試合で1敗しかしていないスイスの充実ぶりが目を引く。高い集中力が、決勝の緊張感を凌駕し、ミスの少ないエンドが続く。波に乗る若いスイスの勢いに、カナダは押され気味だ。象徴的だったのが、カナダのスキップ、ジェニファー・ジョーンズ選手のショットシーン。投げる態勢を止め、手汗を拭いて仕切り直す場面を何度と見た。

 

しかし、ここからカナダが意地を見せる。

3点を返し1点差。そして最終第10エンド、スイスのリードが1投目をミス。カナダはそれを見逃さない。リード、セカンド、サード、スキップの計8投。アバウトなショットが1つもない。点でとらえるショットを積み重ねた。自分達により有利な局面を作りだす作戦。それを無駄にしない、高い要求度に耐えうる個々人のショット精度が素晴らしい。

 

そして、スイスのラストショットの場面。

ハウスの中央付近にカナダのストーンが3つ。スイスチームが得意とするテイクショット(相手のストーンに当ててはじき出すショット)で、自分のストーンをナンバー1にするのは難しい状況。必然的に強いられる、ドローショット(自分のストーンを置きにいくショット)の選択。しかも、置く位置はハウスの限りなく中央しか許されない。

 

どの国のどの選手も、大会を通じ苦しんできたドローショット。許される範囲はごくわずか。世界選手権決勝の舞台で、勝敗を決めるラストショット。王者カナダがこれ以上ないプレッシャーをかけた。カナダの逆転優勝が、にわかに現実味を帯びてきていた。

 

しかし、今大会のヒロインは、スイスの新スキップ、アリーナ・ペーツだった。

 

前髪を後ろに束ね、眼鏡姿が凛々しい25才。今季から名スキップだったオット選手(現コーチ)の後を継ぐ、若き司令塔のラストショットは、30m先のハウス中央を見事に射止めた。きっと、彼女のキャリアで忘れる事のできない1投になるだろう。素晴らしい技術と集中力で、最大のプレッシャーをはねのけた、スーパーショットだ。

 

3年前の世界選手権でリザーブだったニューヒロインが、チームメイトやオットコーチと抱き合う姿は、感動的な光景だった。そして、この感動の陰の立役者はカナダ。最後までスイスを追いつめた戦いは、グッドルーザーという名にふさわしいものだった。

 

スイスの勢いとカナダの意地がぶつかりあった好ゲーム。素晴らしい決勝戦を見せてくれた両チームに、心から拍手を送りたい。