情熱のカムアラウンド

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今さらながら日本シリーズ雑感 〜打たれる3割より、抑える7割〜

カブスがヤギの呪いを解いて108年ぶりの頂点へ。

 

最終第7戦までもつれ込んだ海の向こうのワールドシリーズは、カブスが68年ぶりの頂点を目指すインディアンスを延長戦の末に8−7で降した。プレーオフ絶好調だったインディアンスの中継ぎ左腕ミラーが追加点を許せば、カブスの絶対的守護神チャップマンも3点のリードを守りきれず、6−6で延長戦へ突入。まさに総力戦の大熱戦だった。

 

先週の話になってしまったが、日本シリーズも中々の大熱戦だった。

 

昨年のヤクルト、一昨年の阪神は、かなり一方的にソフトバンクにやられた感があった。しかし、今年ダントツでセリーグを制した広島は、ソフトバンクを退けて進出した日本ハムにまったくひけをとらなかった。むしろ、本拠地で2連勝した後の札幌でも、広島は押し気味で試合を進めていた感があった。第6戦で、日本ハムはようやくシリーズ初の先制点を上げている。第5戦まで常に先取点を取って試合をリードしていたのは、広島だったのだ。

 

個人的な感想だが、広島ががっぷり四つに組めた理由は、攻めていたからだと思っている。

 

「4000のヒットを打つには、8000回以上は悔しい思いをしてきている」

 

これは、日米通算4000本安打を達成した際のイチロー選手のコメント。いまだかつて、日本のプロ野球で4割の壁を越えた打者はいない。メジャーリーグでは、戦前の1941年のテッド・ウィリアムスまで遡らなければならない。ざっくりと言えば、どんな打者でも7割近くは凡退する。その事実を、昨年まで2連覇したソフトバンクは見事に活かしているなあと痛感していた。

 

「打たれる3割を恐れるよりも、抑える7割を信じる」

 

警戒してカウントを悪くするよりも、一番自信のある球種でストライク先行を優先し、投手有利のカウントに持ち込んでいく。一昨年、阪神ソフトバンク投手陣の初球カーブに中々手が出せなかった。昨年、トリプルスリーを達成したヤクルトの山田哲人は、第4戦で3打席連続ホームランを打ったが、シリーズ通算は2割1分1厘。一方、阪神やヤクルトの投手陣は、強力打線を警戒するあまりにフォアボール、又はカウントを悪くして強力打線に捕まる場面を多く作ってしまっていたように感じた。打ち損じを恐れないソフトバンク打線の積極的な姿勢が、阪神やヤクルトに「打たれる3割」を恐れさせた、という見方もできるかもしれない。

 

そんな2年があったから、今年もそこに注目していた。

どちらが「打たれる3割を恐れるよりも、抑える7割を信じる」か?

 

その意味では、ジョンソン・野村・黒田・岡田と第5戦まで広島の先発投手陣は、臆せずに日本ハム打線を攻めていた。その積極的な姿勢が、日本ハムの打者を戸惑わせているように見えた。好調の大谷を除けば、ほぼ抑え込んでいたように感じた。

 

そして、場所を広島に戻して迎えた第6戦。

 

初回の広島の攻撃。日本ハムの先発増井が投じる初球のストライクを、見逃すシーンが気になった。逆に守りでは、ノーストライク2ボールの場面がやけに多かったと記憶している。あくまで個人の感想だが、それはこのシリーズで初めて気になった広島の打ち損じを恐れる姿であり、「打たれる3割」を恐れる姿だった。試合自体は、先制点を取られながらもすぐに逆転し、再逆転されてもまた追いつくという一進一退の内容だったが、第5戦までの攻める広島とは受ける印象が違った。もし、札幌で1勝でも挙げていたら。広島は攻め続けられたかもしれない。そう思うと、日本ハムが重苦しい雰囲気を耐え忍んで逆転した札幌での3試合が大きかったような気がする。単に結果だけを見れば、リリーフ陣の出来や継投のタイミングが明暗を分けたシリーズかもしれないけど。

 

それにしても、日本シリーズはこれでパリーグが4年連続で勝利。来年あたりは、セリーグの巻き返しを見てみたいものだ。