情熱のカムアラウンド

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NHK杯ショート 羽生とレオノワと笑顔

 羽生フィーバーここにあり、という感じだろうか。今年のNHK杯は、五輪の翌シーズンとは思えない程の盛り上がりだ。びっくりしたのが6分間練習の丁寧な中継。フィギュアスケートの演技は 5~6人ごとのグループに分かれていて、1グループ終了後は、次グループの6分間の練習時間となっている。通常、TV中継における6分間練習の扱いは、一息入れるブレイクであるのだが、今回に関してはその練習の様子をずっと中継し解説していた。五輪金メダリストの登場、グランプリファイナル進出がかかる試合と注目される条件は揃っているものの、少し過剰な盛り上がりという印象を受けた。

 

さて、まずは女子。

 村上佳菜子の演技も良かったし、宮原知子も良かった。首位に立ったステイシー・ゴールドの演技も良かった。そして、このノーミス演技の流れを最初に作ったアリーナ・レオノワの演技は、とても素晴らしかった。表情豊かで、指先まで神経が通った演技。リプニツカヤやラジオノワに代表される若い世代が、世界を席巻しているロシア。ベテラン扱いのレオノワだが、まだ浅田真央と同じ24歳。終止絶やすことのなかった笑みに、演技への満足感と共に脇役に配されている女優の意地をみた。NHK杯前のインタビューで、少なくとも70 %の準備ができたと言った彼女は、続けてこう言っている。

「ロシア選手権に向けては、 200%の準備をしなくてはいけません」

 

そして、男子。

 羽生の演技はさえなかった。6分間練習で成功していたジャンプは、本番では2回の失敗。もちろん、演技中のジャンプと練習のジャンプはまったくメンタル、技術ともに難易度は違うのだろうとは思うが。20日前の怪我の影響はわからないが、自らの演技プログラムの消化に苦しんでいる感じだ。事実、怪我をする前日の中国杯ショートプログラムでも、ミスが出ていた。昨年、彼にはパトリック・チャンという狩りの目標がいた。昨年の羽生の笑みは、狩りを楽しんでいるような不敵さが多分に含まれた笑みだった。しかし今、その笑みに含まれているのは、弱みは見せないという意地だろう。五輪でチャンピオンになり、チャンのいない今シーズンは、その狩りの目標を自らの演技プログラムに求めざるを得ない。その1ランクあげた演技プログラムをまだ消化しきれていない苛立ちを必死で抑えているように見える。

 

 過剰な盛り上がりと言いながら、私も随分NHK杯を楽しんでしまったようだ。ここは肩肘張らずに、この異様な雰囲気に身を任せて、役者達の演技を楽しむとしよう。