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土居美咲、悔しすぎる敗戦 明暗を分けた「切り替え力」

全豪オープンテニス1回戦

土居美咲7-6,6-7,3-6アンゲリク・ケルバー

 

日本の土居美咲は、第7シードのアンゲリク・ケルバーを相手にフルセットの大熱戦を演じた。第2セットにはマッチポイントを握り、ストレート勝ちまであと一歩。土居美咲の世界ランクは64位。対するアンゲリク・ケルバーは同6位。フルセットでの敗戦。両者の世界ランクの差。土居選手は間違いなく大健闘だし、その奮闘ぶりを讃えたい。

 

しかし、試合を見た率直な感想は少し異なっていた。素人のくせにおこがましい発言は百も承知の上で言うと、

 

「もったいない。逃した魚は大きい」

 

持てる力を出し切ったので後悔はない、なんて敗戦の弁はよくあるが、この試合に限ってみれば、“持てる力を出し切ったのに、悔いの残る敗戦”だった。ラリーで度々見せたウィナーのショットは、彼女の素晴らしさを強烈に印象づけるものだった。多分に勝てるチャンスがあった。素人目だが、この日に限れば、ゲルバーと土居の間に横たわる力の差はないように見えた。技術もスタミナも。

 

かと言ってメンタルの差なんて一言で乱暴に片付けるのも、私はあまり気が進まない。マッチポイントを握った第2セットを落としても、土居の気力は充実していた。むしろ、感情のコントロールを難しくしていたのは、ケルバーの方だったように見えた。

 

最終セット、ラリーで劣勢を強いられることが多かったゲルバーは、明らかに苛立ちを抑えられないでいた。ポイントを失った後の落胆も隠せなかった。セットの中盤以降は、故障したのか疲労がピークに達したのか、ボールを追わなくなる場面も多くなった。

 

ただし、彼女は引きずっていなかった。

 

1ポイントごとに苛立って、落胆して、雄叫びをあげても、次の準備の際には感情がリセットされている。むしろ、リセットする為に発散しているようにも見えた。ボールを追わない場面が増えた終盤も、粘るポイントと捨てるポイントがはっきりしていた。

 

ゲルバーの感情の起伏は、1ポイントごとに完結していた。

 

対して土居は、素晴らしいショットでポイントをとった後、その勢いでやや丁寧さを欠いたショットミスをしてしまう場面が見受けられた。大事なところで、連続してアンフォースドエラーをしてしまう場面もあった。波に乗り切れなかった。

 

ゲームカウント3−5で迎えた最終セット第9ゲーム。直前のゲルバーのサービスゲームでトリプルのブレークチャンスを逃した土居は、ラブゲームでサービスゲームを落とした。勝負のポイントが何度も訪れ、優劣が激しく揺り動いた熱戦は、あっけなく幕を下ろした。

 

翌日の錦織圭の2回戦。ストレート勝ちで順調に勝利を収めた錦織のアンフォースドエラーは、対戦相手のクライチェクよりも多かった。

 

ただ1つ、トップ10のゲルバーが土居を上回っていたもの。

それは、「切り替え力」ではなかったかと思う。

単なるテクニックの技量でなければ、メンタルの強度とも少し違う。それは、数々の経験を通過して、つかんでいく1つの方法論であり勝つ為のスキル。

 

「トップに行くまでには、こういう競った試合が何回かくると思う。その積み重ねだと思う」

「敗戦から学んだ事を次に繋げる。それだけです」

 

トップ10と戦えるだけの力は示した。何かきっかけをつかめば一気に世界ランクを上げる可能性だって充分ある。この苦い敗戦を糧にして、次なる大舞台、全仏での土居美咲の挑戦に期待したい。